1 本書の紹介2 本書の特色 本書は,これから,民事信託を業務の一つとしたいと考えている弁護士向けに書かれた本です。本書を利用し,実際に,多くの弁護士が民事信託の契約書の作成等に携わるようになってもらいたいと考えています。 学術的な議論を確認したい場合には,新井誠著『信託法』(有斐閣,第4版,2014),神田秀樹・折原誠著『信託法講義』(弘文堂,2014),能見善久・道垣内弘人編『信託法セミナー1~4』(有斐閣,2013~2016)等の学術書・研究書を参照してください。 本書の特色は,第1に,信託の基本的な構成要素に沿って,体系的に信託条項を検討しているところにあります。今まで公刊されている信託契約書のひな形は,様々な信託条項の寄せ集めであり,どのような理由から各信託条項が作成されたのか分からないものばかりでした。本書では,全ての信託条項を体系的に並べており,どのような理由から各信託条項を入れているのか理解できるように配慮しています。本書の信託契約書例を読むことにより,民事信託を設定した際のストーリーを読み取ることができるかと思います。 本書の第2の特色は,信託法の条文を基に各信託条項を検討している点です。従前の信託契約書のひな形は,必ずしも,信託法の条文を意識して作成されていたものとはいえませんでした。悪く言えば,思い付きで作られた趣旨の理解できない信託条項が多かったといえます。しかし,民事信託を発展させるためには,論理的な信託契約書が普及しなければなりません。法律家2 本書の特色 1序 章
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