3 信託の法的構造13)信託法2条1項いうことができる。 信託目的は多種多様なものが考えられるが,専ら受託者の利益を図る目的である場合には信託の設定は認められない。13)受託者は,あくまでも受益者のために信託財産を管理または処分などを行う者であるため,受託者の利益だけを実現するための信託は,もはや信託とはいえないからである。⑴ はじめに 法的な思考に慣れている我々にとって,信託の基本的な法的構造を明らかにすることが信託という制度を理解するためには役に立つ。⑵ 債権説 信託の法的構造については,従来からいくつかの説が主張されていたが,通説は,信託によって受託者が信託財産の完全な所有権を取得する一方で,受益者は,受託者に対し,信託の目的に従った信託財産の管理・処分を行うことについて債権的な請求権を取得するという考え方を採用している。これを債権説という。 すなわち,信託とは,①財産権の移転(その他の処分)という信託行為の「物権的効力」と②一定の目的に従う信託財産の管理処分という信託行為の「債権的効力」との結合と考えることになる。8 第1章 民事信託の基礎委託者受益権債権的拘束物権的処分信託財産受託者受益者
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