5_信託書
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4 信託制度の概要14)信託制度と後見制度の相違については,詳しくは,本書108頁のコラム「信託制度と後見制度の比較」参照 このように,委託者と受託者との間で信託財産が物権的に移転すること,受託者と受益者との間で受益権という債権債務が存在することが信託の特徴であり,この基本的な構造を頭に入れておくと,信託を理解しやすくなる。 つまり,信託は,委託者が受託者に対し信託財産を物権的に処分し,その処分された信託財産を引き当てにして,受益者が受託者に対し債権を有することにするという仕組みである。例えば,不動産を信託財産にした場合であれば,その不動産に居住すること(使用)を受益権の内容にすることも,その不動産を第三者に賃貸することによって得た賃料の給付を受けること(収益)を受益権の内容とすることも,その不動産が処分されたときの対価の給付を受けること(処分)を受益権の内容とすることも,いずれも可能なのである。⑴ はじめに 信託はどのような制度であるかを一言でいえば,財産管理及び財産承継のための制度である。 委託者が受託者に財産権を移転することにより,受託者が委託者に代わり財産を管理することになる(財産管理)。 また,当初の受益者の受益権が消滅するとともに,次順位の受益者が受益権を取得することによって,財産権の承継が行われる(財産承継)。⑵ 財産管理制度 財産管理制度としては後見制度がある。信託と後見制度の主な違いは以下のとおりである。14)ア 本人の意思能力 法定後見は本人の意思能力が不十分になった場合に適用されるのに対し,信託制度は本人(委託者)の意思能力が十分なときに設定されるものである。4 信託制度の概要  9

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