5_信託書
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イ 身上監護 法定後見及び任意後見は,財産管理に加え,身上監護も対象となっているが,信託はあくまで財産管理の制度である。本人(委託者)の身上監護が必要になった場合には,信託だけでは十分に対処することはできず,後見制度を併用しなければならない。ウ 対象となる財産 法定後見は本人の全財産が後見の財産管理の対象となるが,信託は本人(委託者)が選択した財産のみを受託者に預けることができる。エ 監督方法 法定後見及び任意後見は裁判所の監督に服するが,信託は裁判所の監督に服することなく,どのような監督方法を取るかについても,本人(委託者)の意思に基づき決定することができる。⑶ 財産承継制度 財産承継の方法としては遺言がある。遺言と信託行為の主な異同は,以下のとおりである。ア 効力の発生時点 遺言による信託は,遺言によって信託の設定を行うものであり,委託者の死亡により効力が生じる点については,遺言との違いはない。15) 他方,信託契約や自己信託(信託宣言)は,委託者と受託者の合意または委託者の書面による意思表示によって効力が認められている。信託契約や自己信託(信託宣言)においても,受益者の死亡により,次順位の受益者が受益権を取得するという定めをした場合には,遺言と同様に効果を得ることができる。これを「遺言代用信託」という。10  第1章 民事信託の基礎15)信託法4条2項

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