19)信託法23条,25条としても,信託の仕組み自体が終了するとは限らない。二当事者対立構造を前提として考えると,一見,分かりにくい法的状況ではあるが,信託とはこのような仕組みであると理解して欲しい。⑷ 形式的権利帰属者と実質的利益享受者が分かれていること 信託において,受託者は委託者から信託財産を取得する。受託者は,受益者のために,委託者から取得した信託財産を管理または処分等を行う者である。その意味で,受託者はあくまでも形式的な権利の帰属主体であり,他方,受益者は実質的利益の享受主体である。 このように,信託では,形式的な権利帰属者(受託者)と実質的利益享受者(受益者)が分かれているところに特徴がある。また,この形式的権利帰属者(受託者)と実質的利益享受者(受益者)が分化していることが信託を分かりにくくしている要因でもある。⑸ 信託財産は,受託者の一般債権者に対する責任財産とはならないこと(信託財産の独立性) 信託では,受託者を財産の管理者としての役割を全うさせるために,仮に,受託者の経済状況が悪化しても,受託者が管理している信託財産は影響を受けないような仕組みになっている。19) 同じ受託者に帰属する財産であっても,信託財産と受託者の固有財産とは全く別のものとして扱われるのである。これを信託財産の独立性と呼ぶ。 しかし,この信託財産の独立性を悪用することによって,信託の仕組みを利用し,財産の隠匿など不正行為が行われることもある。信託が適正に利用されるようにすることも,信託の組成に関わる弁護士として,十分に注意をしなければならないところである。⑹ 委託者は,受益権の発生,変更,消滅及び帰属等を自由に定められること(信託の柔軟性) 信託では,委託者が受託者との間の合意(信託契約)または遺言することによって,自らが希望したとおりに,受益権を発生させることも,その受益権の内容を変更することも,受益権を消滅させることもできる。5 信託特有の考え方や特徴 13
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