イ 権利者の数の転換 ある権利者が一人で財産を管理することが困難になった場合には,信託を利用することにより,複数の受託者に財産を管理させることができる。 これは,信託の利用により,権利者が一人から複数へ,権利者の数が転換されたものである。 後述の【基本事例】(高齢者の財産保護)における(受託者複数の信託)に関する条項例は,主に,この信託において権利者の数が転換されることを活かした事例に対応するものである。 なお,信託を利用することによって,上記(受託者複数の信託)とは逆に,多数の権利者を一人の権利者にまとめることもできる。ウ 利益享受の時間的な転換 権利者に対し,一度に財産を与えることが不適当な場合や権利者が死亡した後にも特定の者に利益を享受させたいと考えた場合,信託を利用することにより,利益享受者の利益享受を先延ばしさせるなど,時間的にコントロールさせることができる。 これは,信託の利用により,利益享受者の利益享受が時間的に転換されたものである。 後述の【事例1】(親亡き後の問題)は,主に,この信託における利益享受の時間的な変更を活かしたスキームである。また,【事例8】(死後事務委任のための信託),【事例15】(撤回不能遺言と同じ効果を実現する信託)も,主に,この信託の特徴を活かしたスキームである。エ 権利の性状の転換 信託の基本的な法的構造上,権利者の有する権利は所有権や株主権などであっても,受益者が有する権利は,受託者に対する債権となる。事業承継に際し,信託を利用することにより,株主権の自益権と共益権を区別し,後継者および非後継者ともに自益権に相当する受益権を与えることにより非後継ケース),【事例9】(ペットのための信託),【事例10】(信託を利用した不動産の活用と相続税対策),【事例11】(委託者の債務を受託者が借り換えるケース),【事例14】(事業承継─自社株生前贈与の活用),【事例16】(遺言による信託)も,主に,この信託の特徴を活かしたスキームである。6 信託でなければできないこと(信託の独自的機能) 15
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