7 信託法の概要24)寺本昌広『逐条解説新しい信託法』4頁(商事法務,補訂版,2008)25)新井・前掲注20)33頁,田中和明『詳解 信託法務』5頁(清文社,2010) 後述の事例【事例2】(後妻と実子との間の利益調整─後継ぎ遺贈型の受益者連続信託の活用1),【事例3】(子どもがいない夫婦間の相続─後継ぎ遺贈型の受益者連続信託の活用2)は,この信託において委託者が自由に受益権の内容を定めることができるという特徴を活かしたスキームである。⑴ はじめに─新しい信託法の制定 我が国最初の信託法は大正11年に制定された(以下「旧信託法」という。)。しかし,資産の流動化目的の信託や高齢者や障害者等のために財産管理や生活支援を目的とする民事信託など,現代の様々な類型の信託に適切に対応することが困難となっていた。24) そこで,信託法は平成18年に全面的に改正された。⑵ 新しい信託法の特徴 平成18年に全面的に改正された信託法の大きな特徴としては,以下の3点を挙げることができる。25)ア 受託者の義務の任意法規化 旧信託法では,悪質な業者を取り締まる目的から受託者の義務は強行規定が多くなっていたが,実務的には,硬直的で使いにくくなっていた。 そこで,新しい信託法では,私的自治を尊重し,受託者の義務を任意法規化した。イ 受益者の権利の強化 受託者の義務が任意法規化されたことから,受託者の権限濫用により,受益者の利益が損なわれる危険性が高まった。 そこで,受益者の権利を強化するための規律が整備されることになった。ウ 新しい信託類型の創設 新しい信託法は,現代の様々なニーズに応えるため,後継ぎ遺贈型受益者連続信託,自己信託,目的信託など新たな信託の利用方法に関する規律を設7 信託法の概要 17
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