裁算
26/64

2 序 章 民事手続法における裁判費用〔3〕〔4〕〔5〕〔6〕2 手数料とそれ以外の裁判費用 なお,日本では弁護士を訴訟代理人に選任しなければ訴訟を追行することができないという弁護士強制主義は採用されておらず,当事者本人が弁護士を訴訟代理人に選任せず自分で訴訟行為をすることができるため,弁護士が訴訟代理人として訴訟に関与した場合の弁護士費用は,当事者に弁論能力がないため,裁判所が弁護士の付添いを命じた場合(民訴155条2項)を除き,訴訟費用には含まれない。そのため,当事者は,訴訟に勝訴しても,自己の弁護士に支払う弁護士費用を償還するよう相手方に求めることはできない。不法行為による損害賠償訴訟において弁護士費用が相当因果関係内の損害と認められる限りでのみ,弁護士費用は不法行為によって生じた損害として敗訴当事者にその支払いが命じられるにすぎない。 裁判費用と当事者費用が,法律が定める訴訟費用である。⑵ 敗訴者負担主義 訴訟費用を最終的に誰が,いくら負担しなければならないかは,裁判所の裁判により決められる。裁判所は,この訴訟費用の裁判を,事件を完結する裁判において職権で(民訴67条1項),民訴法61条以下の規定に従って行う。民訴法61条の規定によれば,訴訟費用は,権利の伸張または防御に必要であった限り,敗訴当事者の負担となる(敗訴者負担主義)。原告の一部勝訴,一部敗訴のときは,裁判所は,各当事者の訴訟費用の負担をその裁量によって定めるが(同法64条本文),事情によっては当事者の一方に訴訟費用の全額を負担させることもできる(同条ただし書)。⑴ 手数料 上述にように,手数料とそれ以外の裁判費用を裁判費用という。⒜ 手数料の納入  手数料は,当事者が訴えや上訴の提起(行政訴訟の訴え,上訴を含む),借地非訟事件の申立て,民事調停,家事審判・家事調停,労働審判など裁判所に一定の申立てや申出をするさい,裁判所(国庫)に納入すべき費用である。どのような申立てにつき手数料の納入が必要であるかは,法律に定められている(民訴費3条・別表第1,民訴費7条・別表第2,民訴費規4条;人身保護規9条)。これは制限列挙であり,手数料についての定めがない申立てや申出については手数料の納入を要しない。

元のページ  ../index.html#26

このブックを見る