〔7〕〔8〕序 章 民事手続法における裁判費用 3 手数料は,訴額(訴訟物の価額。詳しくは→〔17〕)などを基準に,その額を算定すべきこととされており(民訴費3条以下),原則として訴状等に収入印紙を貼付して納入する(同法8条。ただし納付額が100万円を超えるときは,現金で納付することができる。同条ただし書;民訴費規4条の2)。⒝ 裁判長の訴状審査と補正命令 訴えの提起(原則として訴状の提出)があると,事件は予め定められている事務分配の定めに従って各裁判所(裁判機関としての裁判所)に配布され,裁判長または単独制裁判所の裁判官は訴状が必要的記載事項(民訴133条2項)を具備しているかどうか,また必要な手数料額の収入印紙が貼付されているかどうかを審査する(同法137条,裁判長による訴状審査)。不備が見つかれば,期間を定めて不備を補正するよう原告に命じ(同条1項前段,訴状の補正命令),原告が裁判長の補正命令にもかかわらず,なお訴状を補正せずまたは必要な手数料を納付しないときは,裁判長は命令によって訴状を却下しなければならない(同法137条2項;民訴費6条)。裁判長の訴状却下命令に対し,原告は即時抗告をし,その違法を争うことができる(民訴137条3項)。そうでなければ,請求の当否について判断することなく訴訟手続は終了してしまい,原告には訴状却下の違法を主張する機会がなくなるからである。訴状の補正命令および訴状却下命令は,訴状が被告に送達されるまでの間に限って出すことができる。収入印紙の追貼による補正の効果は,訴状提出時に遡り生ずる。1)⑵ 手数料以外の裁判費用 手数料以外の裁判費用は,裁判所が手続上の行為(証拠調べ,書類の送達など)を行うにつき必要な支出に当てるために,当事者が支払うべき費用である。たとえば,当事者間に争いのある事実につき証拠調べを実施する場合,証人,鑑定人および通訳人は旅費・日当・宿泊料を請求することができ(民訴費18条1項),鑑定人および通訳人は鑑定料または通訳料を請求し,および鑑定または通訳に必要な費用の支払いまたは償還を受けることができる(同条2項)。裁判所は,調査嘱託をして一定の事項につき報告を求め,または鑑定もしくは専門的な知識経験に基づく意見の陳述を嘱託したときは,請求により,報酬および必要な費用を支給する(同法20条1)最判昭和31・4・10民集10巻4号367頁。
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