裁算
29/64

〔11〕序 章 民事手続法における裁判費用 5は,申立て時にその履行期が到来する(民訴費8条1項本文は「手数料は,訴状その他の申立書又は申立ての趣意を記載した調書に収入印紙をはって納めなければならない」と規定している)。裁判所が申立てどおりの訴訟行為をするかどうかは必ずしも明らかではないが,このことは当事者等の手数料支払義務に影響を及ぼさないとされる。3)条件付き申立ての条件が成就するかどうかが未定の場合にも,納付義務は発生するとされる。4)同じことは,反訴被告の同意を要する反訴について,反訴被告の同意の有無が明らかでない場合にも妥当する。これは,手数料納付義務が裁判所の訴訟行為の実施と同時履行の関係にあるのではなく,先履行義務があることを意味する。ただし,後にみるように手数料算定の基礎となる訴額の算定基準が法律上具体的に明らかにされていない以上,訴訟係属中に訴額の再算定が必要になることがあり,その場合には,過納付が明らかになることを否定すべきではない。 これに対し,別表第2上段に掲げる事項(事件記録の閲覧・謄写・複製,事件記録の正本・謄本または抄本の交付,事件に関する事項の証明書の交付,および執行文の付与)については,性質上手数料の先払いは適切ではないので,手数料支払義務は役務の提供がなされるときに生ずると解される。5)⑶ 手数料の徴収確保 上記のように申立て時に手数料を納付しなければならない場合には,当事者等は申立書を裁判所に提出するさい(また口頭による申立ての場合はその申述のさい)手数料を納付しなければならない。手数料納付義務者が手数料の納付を怠る場合には,申立ては不適法な申立てとして扱われることにより(民訴費6条),間接的に納付が強制される。 当事者が手数料以外の費用(→〔2〕)を予納しない場合には,裁判所は原則として費用を要する行為をしないことができるので(民訴費12条2項),ここでも間接的に費用の納付が強制される。もっとも,事件の公益性が重視される一部の裁判手続においては,当事者が費用の予納を怠る場合にも,例外的に,事実の調査,証拠調べ,呼出し,告知その他の非訟事件の手続に必要な行為に要する費用を国庫において立て替えることができる(非訟3)最判昭和41・10・25判時465号44頁=裁判集民事84号733頁。4)最判昭和41・4・22民集20巻4号783頁。5)民事訴訟費用研究187頁参照。

元のページ  ../index.html#29

このブックを見る