裁算
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第1章第1節第1款 訴額の意義 前述のとおり,訴えや上訴を提起する者その他裁判所に一定の申立てや申出をする者は,裁判所に手数料を納付しなければならないが,手数料額は,訴訟物の価額(訴額)を基準に算定することとされ,または法律が定額の形で法定している。定額の定めのある手数料はその額の収入印紙を貼り納付すればよいから,あまり問題は生じない。問題が生ずるのは,訴額を基準とした手数料額の算定である。また,訴額は,手数料のみならず,種々の事項を規律するための基準となる。 訴訟物の価額(訴額)は,金銭に評価された訴訟物(訴訟対象)の価値である。それは,原則として,原告または反訴原告が訴えまたは反訴をもって主張する権利または法律関係について有する利益(価値)である。 日本法においては,訴額は4つの意味を有する。第1に,事物管轄の決定基準としての意味であり,第2に,少額訴訟(民訴368条以下)の管轄限度額としての意味であり,第3に,当事者が裁判所に納入すべき裁判手数料額の算定基準としての意味である。第4に,簡易裁判所において訴訟代理をすることを許された,いわゆる認定司法書士が具体的な事件において訴訟代理をすることができるかどうかを決するのも訴額である。すなわち,認定司法書士は,訴額が140万円以下の事件に限って訴訟代理人として活動することができる。第5に,訴訟代理人である弁護士の報酬の算定基礎第1節 訴額の意義と種類第2節 訴訟物と訴額の算定の原則第3節 各種の訴えにおける訴訟物と訴額第4節 訴額の算定機関,算定の基準時および算定手続第5節 上訴要件としての不服と不服対象第6節 その他の手数料〔17〕第1節 訴額の意義と種類 11訴額の意義と種類訴額に関する一般原則

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