〔18〕とされることがある。さらに仮差押え命令,仮処分命令または仮執行宣言のさいの担保額の基準とされることがあるが,これは訴額の本来の規律目的ではない。12 第1章 訴額に関する一般原則1)不動産の売買代金請求,賃料または損害金の支払請求,建築代金,修理代金等の支払い請求,相隣関係に基づく償金請求(民209条2項,12条等),工作物の設置瑕疵による損害賠償請求のような,不動産に関する金銭請求訴訟は,「不動産に関する訴訟」に含まれない。第2款 訴額の種類1 事物管轄の基準としての訴額(管轄訴額) 第一審裁判所として,地方裁判所と簡易裁判所が設置されているので,第一審の訴訟事件(ただし人事訴訟を除く)を地方裁判所と簡易裁判所に配分して担当させる管轄の定めが必要となる。これは,事件の規模による両裁判所への管轄の配分であり,事物管轄と呼ばれる。この場合,事件の配分の基準は「訴訟の目的」(民訴8条1項)すなわち,訴訟物(→〔40〕)の価額(訴額)である。民訴法は,訴訟物を示す用語を統一的に用いておらず,本条のように「訴訟の目的」といったり,「事件」(民訴142条)と呼んだり,「請求」(同法133条2項2号,136条,143条~146条)と呼んだりしているが,いずれも訴訟物を指している。 現行法上は,訴額が140万円を超えない事件(行政事件訴訟に係る請求を除く)は,簡易裁判所の管轄に属し,それ以外の事件および訴額が140万円を超えない請求に係る事件のうち不動産に関する訴訟(→〔19〕参照)は地方裁判所の管轄に属する(裁24条1号・33条1項1号)。1)不動産に関する訴訟は訴額が90万円以下であっても地方裁判所の管轄に属するとされたのは,昭和57年の裁判所法および民訴法の改正からである。この時,簡易裁判所の事物管轄が大幅に(30万円から90万円に)増額されたので,重要な財産である不動産に関する訴訟について地方裁判所の管轄を確保するために,この規律が採用された。その結果,不動産に関する訴訟の管轄訴額の算定の問題は,その限りにおいて重要性を失った。裁判所は,管轄訴額が重要であり,原告の申立てからおのずから明らかにならない限り,これを職権により算定しなければならない(職権調査事項)。 このように,訴額は先ず簡易裁判所と地方裁判所との間の事物管轄の限界づけにとって意味を有するのであるが,訴額の決定は民訴法8条および
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