裁算
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はしがき 5なり,敗訴当事者は自分が選任した弁護士の費用のみならず,相手方のための弁護士の費用をも支払わなければならないこともあって,訴額を含め訴訟費用の問題は大変関心の大きな重大な問題領域である。また,法律の改正も頻繁に行われ,訴額や訴訟費用に関する実務書の新しい版もしばしば刊行されている。本書においては,可能な限り最新の文献を参照した。ドイツの立法をみても,問題の解決のためには,認定司法書士が簡裁民事訴訟の代理人になることができるようになった現在,事物管轄を含め,訴額の算定基準はやはり立法で基本を定める必要があると考えられる。これは大正15年の民訴法改正のさいの起草者の考えでもあったが,その後は全く放置されてきた。その意味でも,本書が近い将来における手数料訴額の検討のための問題提起になることを希求するものである。 ⑷ 本書の執筆の依頼を受けてから,早や5年以上の歳月が過ぎ去った。本書の出版は,日本加除出版の編集者,金塚万由美さんの熱心な薦めによる。著者がまだ京都にある龍谷大学法学部に勤務していた頃,研究室にお越しになりお話を伺った。理論的な面から訴額問題を明らかにしてほしいということであった。筆者も教科書で簡単にしか叙述していない問題であり,検討の必要を感じていたこともあって,お引受けすることにした。しかしながら,訴額算定基準については法律規定がなく,また扱う範囲が刑事訴訟を除く広範な分野に及ぶこともあって,執筆は遅々として進捗せず,他の仕事を優先させざるを得ないこともあった。そのような次第で,金塚さんにはいろいろと迷惑をかけてしまった。ここにようやく宿題を果たし,肩の荷を降ろすことができる。本書の制作は,都合で,日本加除出版株式会社企画部・真壁耕作さん,編集第二部・宮崎貴之さんが担当された。記して皆様方に衷心よりお礼申し上げたい。 2017年1月吉日松本博之

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