地を所有している者が自ら耕作しているという状況は、年々減少傾向にあります。農業従事者の高齢化が大きな要因の1つであることは間違いありません。高齢のため農作業に従事できなくなっているのです。そして、代わりに他の方に委託耕作してもらうという図式が全国のあちこちで見受けられます。また、農地所有者が死亡した場合、その相続人が全く農業に関わらないということも、自作農主義の破綻に拍車をかけています。現実的に考えると、親が行っていた農業に何らかの形で関わっていたのであれば、農作業の仕方が分かりますから、農業を続けようかという選択肢も出てくるかもしれません。しかし、農作業に関わっていなかったということになれば、耕作の仕方が分からないわけですから、したくてもできないということになります。もちろん、委託耕作自体は農業経営の1つの形でありますので、違法というわけではありません。しかし、委託耕作が増え続けている現状は、農地法が目指していた本来の自作農主義とは、かけ離れているともいえなくもありません。 それでも、委託耕作をお願いできる場合は、引き続き耕作をしてもらえるわけですから、少なくとも農地の荒廃は防ぐことができます。しかし、今日、農業従事者の高齢化に伴う農業離れとともに、農業は儲からないというネガティブなイメージのために新規で農業を始める人が少ないため、農業人口全体が減少傾向に陥っており、耕作者そのものを確保することがとても難しくなっています。この結果、耕作放棄地が全国各地で発生しています。しかも、その面積は年を追うごとに拡大し続けているのです。この傾向は、生産性の低い中山間地域の農地においては深刻な状況です。耕作放棄地が増え続けることは、日本の食糧自給率の低下に直結していますし、全地球的な規模での不作が発生した場合には、生命を脅かされる事態に直面すると言っても過言ではありません。 このように、農業を取り巻く厳しい情勢の下で、農地法は平成21年に大改正されました。農地法は、制定後も小規模な改正を繰り返してきましたが、同年の改正は、農地法全体にわたる改正となったのです。改正農地法の最大の目的は、「『耕作者の地位の安定』と『国内の農業生産の増大』を第1章 農地の相続、農業の承継に関する基礎知識4
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