図ることによって、『国民に対する食料の安定供給を確保すること』」とされました。そして、この目的を達するために2つの視点が盛り込まれました。1つは、これ以上の農地の減少を食い止めるために「農地を確保」するという点、もう1つは、「農地の効率的利用」という点です。 「農地の確保」とは、具体的には、生産性の高い「農用地区域内農地」については、当該区域からの農地の転用を原則として認めないこととして、優良な農地を維持し続けようというものです。農地転用については、改正前の農地法においても規制がかけられていましたが、それにも増して違反転用に対する罰則を強化して、厳しい姿勢で臨むこととされました。小泉内閣以来、規制緩和が広く行われてきていますが、農地の転用については、逆に規制を強化したのです。 「農地の効率的利用」についてですが、この視点では、より多くの者に農業に参入してもらうべく、とりわけ農地の賃貸借規制について大幅に要件を緩和しました。自作農主義が崩壊している現実を直視し、この転換を図ったのです。この方針転換によって自然人であっても、法人であっても農地が借りやすくなりました。反対意見が強かった法人について、農業参入のハードルを低くしている点は特に注目に値します。農業の担い手不足の問題を、法人の農業参入によって補おうというわけです。平成21年の改正を待たずとも、法人は農地を借りることができましたが、その条件は厳格でした。例えば、当時の農業生産法人(現在の農地所有適格法人)であれば、全国どこでも農地を所有し、または借りることができましたが、それ以外の法人は、市町村が定めた地区の農地しか借りることができませんでした。しかし、改正農地法においては、貸借のみに限っているとはいえ、農地所有適格法人以外の法人であっても全国どこでも解除条件付き貸借契約によって借りることができるようになりました。 上記2つの改正の視点以外の他に、農地法に初めて責務規定が設けられたこともポイントです。農地法第2条の2において、農地について権利を有する者は、「農地の適正かつ効率的な利用を確保しなければならない。」とされました。責務規定を新設した意図は、農業者に対して農地が地域に第1節 農地の権利変動5
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