農承
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 司法書士高田タロウは、会社員福山甲一(55歳)より、次のような相談を受けた。 東京都から電車で1時間圏内の埼玉県西部にある福山さんの実家は農家である。首都圏のベッドタウンであるこの市の主要駅周辺は商業地域であり、それを住宅地が囲む構造となっている。駅から2~3㎞ほど離れると田畑など、のどかな風景が広がっている。福山さんの父である義太郎さん(81歳)と母の花子さん(79歳)は共に農業を営んでいるが、主に里芋やニンジン、キュウリ、ブロッコリー、小松菜を栽培しており、農協を通じて販売することで収益を上げていた。 福山さんは現在、実家から都内の会社に勤務しているが、父の義太郎さんから実家の畑や農業についてどう思っているか尋ねられていた。数年前にも話はあったが、その時は会社も忙しく、そのまま話が流れてしまったが、現在に至っては実家の農業をやってもよいのではないかとその気になっている部分もあった。福山さんには、義太郎さんの長女で妹の緑子さんと、二男で弟の乙二さんがいる。二人はどう思っているのか聞いてみたが、皆考えはするものの時間だけが経っていったのであった。 さて、ほどなく、義太郎さんが亡くなられた。甲一さんは相続について相談するため、司法書士事務所を訪れた。事例1 こんなに急に親父が亡くなるとは。事例1 相続─相続した農地の処分、有効活用福山75概 要相続─相続した農地の処分、有効活用

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