農家とは、家として農業を営んでいる世帯を指し、市区町村の農業委員会には、世帯ごとの農地の権利関係や経営状況等の管理を行うために、農地台帳(通称・農家台帳又は農地基本台帳)が備え付けられています。農地台帳には、農業委員会が法令事務を処理するに当たり必要な資料たることを目的として、その世帯員についての情報(氏名・続柄・誰が農業経営者か)、所有する農地の情報、農地に使用収益権が設定されている場合の権利の種類及び存続期間と権利者の情報、主要農機具や主要家畜の頭数などの情報が記載されています。そして、その記載事項に変動が生じた場合には、農業委員会への届出が必要になります。経営の承継という場合には、同一世帯内において、他の世帯員である後継者に承継する場合もあれば、後継者がいないため、第三者に承継するという場合もあります。このうち、農地台帳における農業経営者の変更は、主たる耕作事業者を他の者に変更することを指しています。 例えば、この事例において、照山二郎がその経営権を次男に移譲することを決め、経営主変更届(次頁参照)を提出すると、記載が変更されることになります。 さらに、農業の承継では、経営権の移譲と同時に、農地を含む経営資産の承継についても熟慮することが必要です。現在の経営者が農地を所有していても、経営権の移譲に伴い、すぐに後継者に農地の所有権を移転せず、使用収益権の設定をすることでも足りますが、将来相続が発生した際に、相続人間の遺産分割協議によって農地が分散し、農業経営に支障をきたすおそれもありますので、先延ばしにせずに対応策を考えるべきだといえます。第2章 農地の相続、農業の承継についての事例検討134■1農家の経営権と経営承継
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