農承
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Column158 米、麦、野菜を栽培する個人経営の農家の事業承継では、特に、相続によって、田畑などの土地が分散することがないよう承継対策を講じることが必要になります。一方、畜産農家の相続では、その後継者に、農地のほか牛舎、厩舎、家畜等を承継することになります。それらの事業資産が相続によって分散することがないよう、対策を講じる必要があることは他の農家と変わりありません。注意すべき点は、肉用牛などの棚卸資産には、農地等の贈与税の納税猶予制度の適用がなく、先代経営者についての相続発生時に多額の相続税が発生し、事業の継続に大きな影響を与えることが少なくないということです。最近では、その事業承継対策として、法人化を検討する畜産農家が増えています。肉用牛を所有する経営者が元気なうちに法人を設立し、当該法人に事業資産の所有権を順次移転していくのです。 この場合、生前の事業承継対策として主に問題になるのは、当該法人が株式会社であるときには、経営者が保有している株式の承継です。この問題に対する制度として、非上場株式等納税猶予制度があります。後継者である受贈者が、贈与により、経済産業大臣の認定を受ける非上場会社の株式等を先代経営者である贈与者から全部又は一定数以上取得し、その会社を経営していく場合に、その経営承継受贈者が納付すべき贈与税のうち、その非上場株式等に対応する贈与税の納税が猶予される制度です。当該納税猶予税額は、先代経営者や経営承継受贈者が死亡した場合などには、その全部又は一部が免除される一方、当該特例の適用を受けた非上場株式等を譲渡するなどの一定の場合には、納税猶予税額の全部又は一部を利子税と併せて納付する必要があるなど、農地等の贈与税の納税猶予制度と類似点があり、利用する際には注意が必要です。第2章 農地の相続、農業の承継についての事例検討畜産農家の事業承継対策9

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