上の調停の結果等)や農地の占有利用の実態等を考慮した結果、信義則に反し権利濫用とされるとも判旨されているので、慎重に判断する必要があります。 「許可申請協力請求権」の消滅時効を売主もしくは売主の相続人が援用した場合、この農地に関する「許可等」取得が不可能となり、停止条件付売買契約の停止条件の不成就が確定する結果、この農地の売買契約の効力が不発生(無効)となります。したがって、売主は買主に対して農地売買契約の無効を主張することができます。なお、売買契約が無効となれば、事前に売買代金等の授受がされていた場合には、その代金の返還等の問題が残ることには注意が必要です。⑶ 農地の仮登記後に非農地化した場合 では、農地法第5条の許可の出ない「農地」もしくは「買主」であったため、とりあえず農地法第5条の許可を条件とする条件付売買契約を締結し、仮登記した後に、たとえば農地が宅地に地目変更されてしまった場合はどうなるのでしょうか。 登記研究575号には「令和1年4月1日売買」を原因として農地法の許可を条件とする所有権移転仮登記がされている農地につき、「令和2年5月1日地目変更」を原因として宅地に地目変更の登記がされた場合には、農地法の許可書を添付することなく「令和2年5月1日売買」を原因として、本登記の申請をすることができるとあります。つまり、農地が農地でなくなったとき、売買契約は、無条件となったものとされ、ただちに所有権は移転するものと解されるからです。 なお、市街化農地になった場合でも地目は農地であるため、農地法第5条届出が必要です。いまだ条件は未成就状態であるため、「許可申請協力請求権」の消滅時効を売主もしくは売主の相続人が援用することは可能です。272第2章 農地の相続、農業の承継についての事例検討
元のページ ../index.html#44