第1章第1 はじめに 12006(平成18)年12月8日,新「信託法」及びこれに伴う「信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」が,第165回臨時国会で成立し,同月15日に公布され,2007(平成19)年9月30日に施行された。新信託法(以下,単に「信託法」という。)は,1922(大正11)年に制定され,制定当時の内容をほぼ留めていた旧信託法を抜本的に改正したものであるが,信託法の特色としては,一般に,次の3点が挙げられている。第1に,「受託者の義務の適切な要件の下での合理化」,第2に,「受益者の権利行使の実効性と機動性を高めるための規律の整備」,第3に,「多様な信託の利用形態に対応するための制度の創設」である。さらに,最近では,第4の点として,「民事信託の普及のための規律の創設」を挙げることができる。これらのうち,第1,第2の点については,概ね信託法改正の当初の狙いどおり,信託実務の法的安定性と円滑な運営に寄与していると評価できる。一方,第3の点においては,新しい類型の信託の活用が大いに期待されていたにもかかわらず,一部有用に利用されているものの,実施状況としては,総じて,低調であると言わざるを得ない。また,第4の点については,第3の点とは対照的に,この2,3年,民事信託が急速な進展をみせており,とりわけ,新しく創設された遺言代用信託が,営業信託,非営業信託を問わず,残高,件数ともに,急激な増加を見せている。第1 はじめに総 論
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