第2 信託法の概要/5 信託財産 5いる。信託財産の負担する債務には,「信託前に生じた委託者に対する債権であって,当該債権に係る債務を信託財産責任負担債務とする旨の信託行為の定めがあるもの」に係る債務が含まれており(同項3号),委託者が負っていた債務を信託財産で負担する債務とすることができるが,債務は,信託財産には含まれない。また,信託財産責任負担債務のうち,①受益債権,②限定責任信託における信託債権,③その他この法律に規定された信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負うものとされる場合の信託債権,④責任財産限定特約が付された信託債権,に係る債務については,受託者が信託財産に属する財産のみをもって履行の責任を負う債務となる(信託法21条2項)。⑶ 相 殺信託法においては,信託財産に属する債権と固有財産に属する債権との相殺について,第三者からは,信託財産に対する強制執行等の制限に基づき制限され(信託法22条),一方,受託者からの相殺の場合には,信託財産に対する強制執行等の制限に加えて受託者の忠実義務における利益相反行為の制限等に基づき,制限されている。⑷ 信託財産の独立性信託法では,信託財産責任負担債務に係る債権,すなわち,信託債権に基づく場合を除き,信託財産に属する財産に対しては,強制執行,仮差押え,仮処分,担保権の実行,競売又は国税滞納処分をすることができない(信託法23条1項)。また,この規定に違反してなされた強制執行,仮差押え,仮処分,担保権の実行若しくは競売又は国税滞納処分に対しては,受託者又は受益者は,異議を主張することができる(同法23条5項・6項)。信託法25条1項においては,受託者が破産手続開始の決定を受けた場合であっても,信託財産に属する財産は,破産財団に属せず,また,同条2項では,受益債権は,破産債権とならず,受託者が信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う信託債権についても同様に,破産債権になら
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