6 第1章 総 論ないものと規定されている。さらに,受託者が破産手続開始の決定を受けた場合において,破産法252条1項の免責許可の決定による信託債権(信託財産に責任が限定されるものを除く。)に係る債務の免責は,信託財産との関係においては,その効力を主張することができないものとされている(信託法25条3項)。⑸ 信託財産と固有財産等との識別不能信託法18条では,信託財産に属する財産と固有財産(又は他の信託財産)に属する財産とが,識別することができなくなった場合は,その当時における各財産の価格の割合に応じて識別不能となった各財産の共有持分が当該信託財産と固有財産(又は他の信託財産)とに帰属するものとみなし,識別不能となった当時における価格の割合が不明である場合には,その共有持分の割合は均等であると推定するものとしている。この規律は,分別管理義務に違反した場合や信託行為の定めにより分別管理されなかった場合において,受託者が倒産したときには,信託の登記・登録すべき財産を除き,帳簿等により信託財産の計算が明らかにされていれば,信託財産は受託者の倒産から保護されるという効果をもたらすことになるものと考えられる。6受託者の権限信託法26条では,「受託者は,信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために必要な行為をする権限を有する。ただし,信託行為によりその権限に制限を加えることを妨げない。」ことが定められている。また,受託者の権限違反行為を行った場合の効果について,信託財産が信託の登記又は登録をすることができる財産とできない財産に分けて規定している。⑴ 信託財産が信託の登記又は登録をすることができない財産については,原則として,受託者が信託財産のためにした行為が,その権限に属しない場合において,行為の相手方が,行為の当時,その行為が,①「信託財産のた
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