第1 創設の経緯/3 セキュリティ・トラストの利点 33債権担保権一元的管理受 託 者担保物権を被担保債権から分離して信託することは,担保物権の特質に反するようだが,担保物権の付従性を緩和して考え,実際上の便宜も考慮して,認めるべきであろうという見解も示されていた3セキュリティ・トラストの利点セキュリティ・トラストの利点は,担保権を一元的に管理し得ることにある。担保付社債信託においては,社債の発行会社と社債権者の間に,受託会社が介在し,受託会社が社債の発行会社から社債を被担保債権として担保権の設定を受け,多数の社債権者のために,担保権を保存し,実行することが可能となる。セキュリティ・トラストにおいても,同様の利益状況が想定でき,多数の債権を被担保債権として,単一の受託者のために担保権を設定することにより,受託者が多数の債権者のために,一元的に担保権を管理できるというメリットがある。すなわち,担保権の設定時において,多数の債権者ではなく,単一の受託者が設定を受ければ足りることになり,また,債権が譲渡された場合において,担保権者が固定されることで,担保権に係る移転の手続が簡便になる。また,資産の流動化等によるスキーム(仕組み)を組成して資金調達を行債務者資産4)。多数の債権者優先劣後受益権図2 セキュリティ・トラストの利点4)四宮和夫『信託法[新版]』(有斐閣,1989)138頁
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