1法3条34 第2章 セキュリティ・トラスト5)銀行界としても法制審議会に強く要望したとされている。浅田隆ほか「座談会 銀行から見た新たな信託法制―想定され得る設例を契機に―」金融法務事情1810号24頁5),信託法は,う,いわゆるストラクチャード・ファイナンス取引において,リスク選好度の異なるレンダー(貸付人)が存在する場合,セキュリティ・トラストを利用することにより,担保権自体の順位に差をつけることなく,受益権に優先劣後関係を持たせて,担保権実行の際に受けた配当の分配を行うことができるという長所も挙げられている。4制度の創設このような利点を踏まえた経済社会のニーズの高まりを背景に明文により,セキュリティ・トラストを認めた。すなわち,信託法3条は,信託の方法に関し,その1号において信託契約,その2号において遺言によるものを定めるが,その信託契約及び遺言の内容につき,「財産の譲渡,担保権の設定その他の財産の処分をする旨」及び「一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の達成のために必要な行為をすべき旨」(下線筆者)と定めて,担保権の設定とその保存・実行を内容とする契約や遺言が,信託の方法として可能であることが,明らかにされている。セキュリティ・トラストは,シンジケート・ローンやストラクチャード・ファイナンス等の主として金融取引において活用が期待されて創設されたということができる。既に述べたとおり,信託法3条は,信託の方法に関し,「担保権の設定」を明記し,被担保債権と分離して担保権だけを独立して信託することを明文で認めている。第2 条文の解釈
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