6_借正
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裁判例1 「賃貸借契約の締結が遠い過去に属し,賃貸人賃借人の双方共にとって契約締結の時期があ2 第1編 正当事由による借地契約の終了遅滞なく異議を述べて更新を拒絶することができる旨を規定している。 また,同法6条1項は,「借地権者借地権ノ消滅後土地ノ使用ヲ継続スル場合ニ於テ土地所有者カ遅滞ナク異議ヲ述ヘサリシトキハ前契約ト同一ノ条件ヲ以テ更ニ借地権ヲ設定シタルモノト看做ス此ノ場合ニ於テハ前条第1項ノ規定ヲ準用ス」と規定し,同条2項において,「前項ノ場合ニ於テ建物アルトキハ土地所有者ハ第4条第1項但書ニ規定スル事由アルニ非サレハ異議ヲ述フルコトヲ得ス」と定め,建物があるときは土地所有者(借地権設定者)の異議には正当事由が必要となる。 さらに,同法8条で,「前2条ノ規定ハ借地権者カ更ニ借地権ヲ設定シタル場合ニ之ヲ準用ス」と規定し,転借地権者の存続期間が満了した場合に建物が存在するときは,土地所有者(借地権設定者)の異議には正当事由が必要となる。 正当事由の存否を判断するに当たっては,借地法4条は,「土地所有者カ自ラ土地ヲ使用スルコトヲ必要トスル場合其ノ他正当ノ事由アル場合」としていたが,借地借家法6条は,「土地の使用を必要とする事情のほか,借地に関する従前の経過及び土地の利用状況並びに借地権設定者が土地の明渡しの条件として又は土地の明渡しと引換えに借地権者に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合」の4つの判断基準を挙げている。そして,「土地の使用を必要とする事情」が正当事由の存否の主たる要因であり,そのほかは従たる要因であるとされている。 なお,平成4年8月1日に施行された借地借家法(平成3年10月4日法律第90号)は,その附則4条において,「この法律の規定は,この附則に特別の定めがある場合を除き,この法律の施行前に生じた事項にも適用する。ただし,附則第2条の規定による廃止前の建物保護に関する法律,借地法及び借家法の規定により生じた効力を妨げない。」と規定している。 そして,附則6条に,「この法律の施行前に設定された借地権に係る契約の更新に関しては,なお従前の例による。」と特別の定めがあるので,平成4年7月31日以前の建物所有を目的とする土地の賃貸借契約については,借地法の更新に関する規定が適用されることに留意されたい。1 異議申立ての時期 借地権者が,賃貸借契約の更新を請求してきたときに,借地権設定者が更新を拒絶する場合には,「遅滞なく」異議を述べなければならないが,この点について,次のような判例がある。賃貸借契約の締結時が判然としない場合,結果的に,賃貸人の異議が契約期間満了後,約1年半を経過した後になされたとしても,遅滞なく述べられた異議に当たり,それまでの間,賃料を受領していたことをもって,賃貸人が異議権を放棄したものと推認することはできない。最判昭和39年10月16日(民集18巻8号1705頁,裁判集民75号801頁,判時397号37頁,判タ170号115頁)

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