6_借正
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正当事由による借地契約の終了断の基準時期後に生じた事実は,これを右正当事由として斟酌することを得ないものであるとし,所論立退料支払の条件提示は,原判決の認定した事実関係の下においては,右判断の基準時期後に生じた事実であって,正当事由としては斟酌し得ない旨を判示しているのであって,右原審の判断は正当である。」裁判例4 「(3)右,(1)(2)の事情を比較すれば,本件土地の利用を必要ならしめる生計事情は,原被告ともに切実なものがうかがわれる。すなわち,いずれも家族中に病人を擁し,生計に余裕はなく,現に本件土地に立脚する自家営業を唯一の生計手段とし,あるいは,新たに本件土地で自家営業を営むことによって生活面を打開しようとしているのであるから,本件土地を必要とする直接の理由のみをとりあげるならば,その優劣は容易につけがたいと言わなければならない。 かかる場合には,より間接的な事情にわたって判断されなければならない。すなわち,原告〔賃貸人〕が前記認定の通りの生活状況下で,治療のかたわら生計を立てるためには適当の場所を得て自家営業をなす他はないことは現在の社会経済生活の実情に鑑みて明らかであるが,そのためには,原告としては,自らが所有する土地をその賃借人ないし第三者に処分し,代わりに営業に適する土地を入手するなどの可能性は残されているものと言うべきであるから,結局,原告が主張する程度の事情では正当事由の存在につき,これをありとするに充分ではない。〔略〕 (5)そこで,予備的請求について判断するに,本件において正当事由の有無の基準時点は,遅くとも被告Y1〔賃借人〕の本件土地継続使用につき,原告が異議を申し述べた昭和40年1月7日であると考えるのが相当である。しかして,右時点において原告に本件賃貸借の更新拒絶につき正当事由のないことは前段認定の通りであり,原告が金400万円を被告Y1に贈与することを申し出たのは,昭和41年9月28日施行の第7回口頭弁論期日であることは本件記録上明白であるから,右金員の贈与は正当事由の有無につき考慮すべき事由とはならず,本件賃貸借は,昭和39年12月31日の期間満了と共に,従前の条件で更新されたものといわねばならない。」裁判例5 「原判決は,所論指摘のように,更新前の賃貸借期間終了の時より後の事情にも触れているが,原判決が正当の事由の有無の判断基準時を右賃貸借期間終了の時とし,その時に存在した事実関係のもとにその判断をしていることは明らかであり,所論のその後の事情は,単に右判賃貸人が賃借人に対して,400万円の金員の提供を申し出たのは,異議時から約1年8か月後であるから,正当事由の有無につき,考慮すべき事由とはならないとした事例東京地判昭和42年7月13日(判時497号55頁)正当事由の有無の判断基準時を賃貸借期間終了の時とし,その後の資料を判断基準時の事実関係を認定するための資料として斟酌した原審の判断は正当である。最判昭和49年9月20日(裁判集民112号583頁)2 正当事由の判断基準時 5

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