6_借正
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裁判例76 「右事実をもとにして按ずるに,本件建物の代物弁済契約,本件土地の借地契約等にはじまるXとY1間の賃貸借関係がことごとくXのY2,Y3を本件建物から追い立てるための擬装工作だとまでは断じ難いけれども,Y1はY2,Y3が本件建物に賃借人として居住していることを承知の上で本件建物の権利を譲り受けながら,本件建物を自ら使用することができず,Y2,Y3が賃料の増額にもすんなりと応じないとなるや本件土地の賃貸借関係を正常に推持して本件建物の賃貸人としての責務を果たす気持をも失い,本件土地の地代を支払わず,契約解除の結果を自ら招来したものと認められる。 そうすると,これは実質においてY1が本件土地の借地権を自ら放棄したものと解するのが相当である。〔略〕 しかし,本件においては本件建物を賃貸した者がもとはといえばXであったことなど前認定の事態の推移,その他本件証拠にあらわれた諸事情を考慮すると,借地上の建物の賃借人を保護するために地主たるXの権利が制約されてもやむを得ないとみられるから,本件Y1の債務不履行が前述のように単純な債務不履行ではなくむしろ借地人の借地権放棄とみるべきである以上,右債務不履行から直ちに機械的にXのY2,Y3に対する明渡請求を肯認するのは相当でない。 よって,Xのなした本件土地の賃貸借契約の解除が実質は賃借権の放棄ないし合意解約であって,Y2,Y3には対抗しえないとのY2,Y3らの抗弁は理由があると認められる。」 として,借地人の債務不履行は,むしろ,借地権の放棄とみるべきであり,賃貸人の借地人に対する契約解除は,建物の賃借人には対抗し得ないと判示した。第4借に地よ権るの終放了棄 ここでいう「借地権の放棄」は,「借家権の放棄」と同様に,客観的に「借地権の放棄」とみられる場合を指す(合意による場合は,借地法等の強行規定に反する場合がある。)。なお,借地権の放棄については,次の広島地裁の判例がある。広島地判昭和47年2月18日(判時668号71頁,判タ277号294頁,金判314第4 借地権の放棄による終了 71号13頁)第4 借地権の放棄による終了

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