平成29年6月 簡易裁判所における調停事件や民事事件で,最近,増加していると思われる事件として,賃料増額請求事件や建物明渡請求事件があり,特に,借家において,昭和56年以前に建てられたビルや木造建物の老朽化が進み,昭和56年改正の建築基準法に基づく耐震基準等に合致しないとの理由で,建物明渡しが請求されることが多い。 しかし,借地においても,借家においても賃貸人の賃借人に対する更新拒絶や解約申入れには,正当事由が必要である。そこで,実務の中では,正当事由について,どのように判断しているのか,賃貸人及び賃借人の土地や建物の使用を必要とする事情のほかに,どのような要素を踏まえて判断しているのかなどを把握できれば,実務の参考になるのではないかと考えている次第である。ただし,正当事由については,事件によって様々な要素が重なっており,分類するのが難しい事例も多々あるので,分類は一応便宜的なものと考えていただきたい。 また,更新拒絶や解約申入れに正当事由があれば,賃貸借契約は終了するが,借地契約及び借家契約において,正当事由の存在のほかにどのような事由が終了事由になるのかも併せて載せてみた。今後の訴訟上の和解や調停,不動産関係訴訟等の参考になれば幸いである。 最後に,本書の出版に当たっては,再び,日本加除出版株式会社編集部の前田敏克さんに大変お世話になり,心から感謝申し上げる。は し が き iは し が き伊 藤 秀 城
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