1 家族信託契約の大きな役割2 過渡期を迎えた家族民事信託⑴ 家族信託契約は、本人が第三者に財産(資産)を託し、本人の生活を護り、しかも大切な資産を承継遺贈するという仕組みであるとともに、世代を超えてその家族の安定した生活を確保するという長期的な財産管理承継機能を有する制度である。 そもそも本人の財産を管理しその生活を護るのは成年後見制度を中心とした財産管理制度であり、また財産の承継遺贈の仕組みは遺言制度が唯一最良の手段だと思っている人も少なくないはずである。しかし、ここにきて、成年後見制度や遺言制度に頼ることなく、これに替わってより確かな方法で本人の財産を管理して本人やその家族を護り、しかも確実かつ円滑に当該財産を承継させる仕組みとして、多くの人に家族信託契約を中心とする家族民事信託の制度が信認され、これが数多く活用されるようになった。⑵ 新しい信託法が施行されて15年を迎え、家族のための信託の有用性が理解されてきたと言える。 このような役割を果たし始めた家族のための民事信託の法的仕組みをさらに多くの人に知ってもらうために、セミナー等ではわかりやすく、家族信託契約の有用性について説明し、正しい活用方法をお伝えしている。 筆者は、この制度を「家族信託」という名で紹介し、これが多くの人に普及してきたことに手ごたえを感じている。⑴ この15年間を振り返ると、士業を含む一部の人たちによって、奔放かつ無規律な信託契約書が作成されるという問題が起きていた。その原因は、次に説明する後見信託と承継信託という複合的法制度が難しく、しか序論 過渡期を迎えた家族信託契約 3
元のページ ../index.html#31