4_家契
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6 序論 過渡期を迎えた家族信託契約さらに、これはリスクの少ない商品に限定されるであろうが金融商品を購入して資産を運用することもできるのである。 この後見的な財産管理機能は、世代を超えて活用できる。多くは、高齢の配偶者や障害を有する子のために活用されるが、さらに孫の教育を支援するためにも利用することができる。しかも、この仕組みは、契約当事者の破産、倒産等には影響を受けないのである。 家族信託契約は、このように広遠な広がりを持っている。⑵ 資産承継機能を有すること 家族信託契約は、委託者本人の資産を本人の意思に従って特定の者に、確実にしかも円滑に承継できる制度である。それも一代に限らず何代も継続承継できるのである。 家族信託契約は、遺言制度と違い、更なる将来を見越した奥が深い仕組みとなっている。遺言は、遺言者が長年の間に築き守ってきた大事な財産を、相続人など誰にどのように配分して遺し、後世に役立たせるかの意思表示であるが、その視点は、遺言者の死亡時一点ということになる。 しかし、家族信託は、遺産分割型信託契約のように、委託者死亡時に資産を承継させるものもあるが、利益を享受する受益者を次の世代に連続させたり、あるいは民法では認められない後継ぎ遺贈型の財産承継も可能なのである。しかも、これを組み合わせて「後継ぎ遺贈型受益者連続」の仕組みをつくることもできる。この後継ぎ遺贈型受益者連続信託によって、信託を設定する委託者の思いを100年近くのあいだ実現でき、あるいは特定の不動産等を長子、次に孫の長子、そしてひ孫の長子に確実に承継するいわゆる「跡取り(家督)連続承継」もできるのである。 そのうえ、一定の変更等の手続を踏めば、その受益者や最終の帰属権利者をも変えることができ、しかも、信託財産は本人の遺産からも除かれるので、遺産分割協議の対象にもならないのである。

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