4_家契
35/70

4 任意後見契約との有機的結合の魅力5 重要度を増している信託の税務について 家族信託契約は、家族のための財産管理承継制度であり、財産を「管理(守る)」「活用(活かす)」、そして「遺す(承継帰属させる)」という機能を一つの法的仕組みでできる、ほかにはない特殊な制度である。最近、この制度の強みが多くの人に理解され、任意後見契約などの他の制度と併用されて大きく機能し始めている。 というのも、家族信託契約は、その役割を果たす領域が決まっている。家族のための信託制度は、あくまでも財産の管理承継制度であり、財産の管理制度の範疇に入らない本人の身上保護(本人の生活や療養看護に関すること)に関わる支援や手配という事務には信託事務の担い手は直接関わることはできない。さらに、信託財産以外の本人の固有財産については、信託を託された者(受託者)が自由に管理処分や信託財産へ移動することはできず、また本人死亡時に遺言によるいわゆる注ぎ込み条項なくして本人の遺産(固有財産)を自由に信託財産に取り込んで帰属権利者等に給付することはできない。 そこで、他の制度と併用し、その果たす役割のハイブリッド化を図っているのである。⑴ 税務の知識が求められる家族信託支援業務 今日、信託税制を知らないで、家族信託支援業務を担うことはできなくなっている。不動産信託における登録免許税のほか、所得税・相続税等の関係は、本書第2編第4章で説明するが、このほか、特異な相談も増えている。当初から、他益信託にし、相続時精算課税制度を利用したいという事例や、事業承継税制との違いを教えてほしいというものもある。このように、信託の企画制作にあたっては、税務専門職とのネットワークはます序論 過渡期を迎えた家族信託契約 7

元のページ  ../index.html#35

このブックを見る