6 用語の使い分けの難しさした空き家対策にあっては、特例の適用がないというのであるが、その説明理由は、いささか木を見て森を見ないもので、説得力に乏しく正鵠を得たものではないが、反面税法を知らないと恐ろしいことになることを思い知らされた。⑴ 家族民事信託の実務での用語の使い方が難しい。 それを端的に表しているのが、信託法91条で、「新たな受益権を取得する」(本文)と「新たに受益権を取得する」(見出し)といった使い分けがされている。この見出しも法令の一部を構成すると言われている。 さらに、ここに来て、実務では、法の定める狭義の使い方と、広義の使い方がなされる用語が多用されるようになった。その一例が「脱法信託」である。信託法は、法令により財産権を取得できない者は受益権を取得できない(法9条)と定めているが、実務では広く「法律の網をくぐる信託」をも同じ呼称としている。⑵ ところで、本書の読者の中には用語のことで違和感を覚えられている人が多いのではないかと思う。 その一つは、「信託口座」(金融機関の担当者から見た口座の呼称)と「信託口口座」(口座利用者から見た口座の呼称)である。本書では、この区別が難しい二つの用語をあえて使わせていただいた。「信託口座」は、金融機関が家族民事信託のために扱う倒産隔離機能をも具備した民事信託管理口座のことであり、受託者の固有財産として扱われる「預金口座」とは異なる口座のことである。一方、「信託口口座」(「信託口」口座)は、金融機関から受託者に対して与えられた特定の民事信託管理口座であって、受託者等から見た口座の呼称のことである。序論 過渡期を迎えた家族信託契約 9
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