4_家契
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1 信託は遺産相続を飛越する 「信託財産は本人の遺産でなくなる」ことをまず知ってほしい。⑴ 家族信託契約は、家族のために活用される特異な財産管理承継制度である。 この信託契約を知るうえで、信託がいかに特異な法的制度かを確実に会得する必要がある。そこで、最初に頭を切り替える必要がある事項は、信託に組み込まれる財産(信託財産)が、本人のものでなくなり、本人の遺産から消えるということである。 信託財産は、信託譲渡により託された受託者の名義にはなるが、誰のものでもない財産(nobodyʼs property)として信託の中では扱われる(「全訂」第1編第4・1㈡参照)。⑵ 信託では、信託財産を受託者に移転するという信託譲渡手続が踏まれる。 これにより信託財産は、受託者の所有となる。ただし、受託者の固有財産になるのではない。 家族信託契約の信託財産は、もとの財産の所有者である委託者の相続財産にはならず遺言対象財産から外れ、また遺産分割の対象からも外れるのである。しかし、信託財産から委託者兼受益者に生活費や交際費として給付された金銭等は受益者に給付され受託者の手から完全に離れたときから受益者の個有の財産となり、遺産となって遺言や相続の対象になる。第1 家族信託契約の仕組み等を知る 13第1 家族信託契約の仕組み等を知る第1章 家族信託契約の法制度を知る

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