2 後見人と受託者の管理する財産は明らかに違うこと⑴ 家族信託契約は、任意後見制度と併用して利用することが大事である。 家族信託契約は、筆者の場合、移行型任意後見契約と遺言との3点セット、または終末医療等に関する宣言公正証書を含めた4点セットを公正証書で作成することが多い(本書52頁)。 この家族信託契約と移行型任意後見契約との併用は、ともに老後の安心設計となり、補完し合う関係にあるからである。⑵ そこで、信託事務と任意後見契約の管理対象財産の違いを知ることが大事である。 家族信託契約と移行型の任意後見契約とでは扱う対象財産が異なるのであるが、受託者と受任者(任意後見受任者)を兄弟姉妹や親子、夫婦で分担するような場合にはその理解が難しい。そこで、次の図をもって説明することにしている。 任意後見契約の対象財産は、委任者本人(信託契約の委託者兼当初受益者になるケースが多い)の「固有財産」が管理の対象になる。多くは、委任者に給付される年金(現行では、本人の年金は本人名義以外の預貯金口座には入金できない)や信託財産に組み込まれなかった財産ということになる。もちろん、信託契約に基づき受益者である委任者に生活費等として給付された現金等は、受託者の手から完全に離脱してしまっていれば、任意後見人(任意後見受任者)の管理する財産となる。一方、信託契約の委託者兼当初受益者の固有財産である年金が高額となっても、受託者が自由に年金を預金口座から払い戻して、これを信託口口座に移動することは受託者の権限外であり、できないのである。第1 家族信託契約の仕組み等を知る 15
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