である。 これだけではない。いま一つの基本的成立要件として❸ 受益者と受託者の信認関係が確立され受益権が確保されていることが挙げられる。この要件は、さらに具体的には⒜ 受託者の権利義務が明確にされていること⒝ 受益者の受益権が確実に確保されるために受益者保護関係人などが活用されていることが必要であると考えている。⑵ ❶及び❷の基本的要件について 家族民事信託は、信じて財産を託し受益者を護る制度である。それは、受託者が委託者のあたかも傀かいらい儡の代行者として財産の管理等を行うものではない。したがって、信託財産の名義を受託者に移転したとしても、信託財産の管理及び処分のみならず受託者の事務処理行為をすべて委託者の指図や同意によって行うという仕組みは、家族民事信託とは言えないと考える。 これについて、受益者が信託財産について各種の行為をなすことを認容する義務を受託者が負うにとどまり、「受託者が何らの管理・処分も行わない信託」のことを「名義信託」という。また、「受託者が、委託者または受益者の指図に従って管理・処分することになっている信託」については「受働信託」と呼ばれている。この委託者等が指図権を有する名義信託でない受働信託については、一般に有効とされるが(道垣内「信託法 第2版」54-55頁)、受益者はもちろん委託者が信託事務に関するすべての事項について指図する信託、すなわち受託者が委託者や受益者の言いなりになる「いっさい指示待ち受働信託」ともいうべき形態も考えられる。 また、信託は特定の目的を実現するためのものであり、これが無視されることはあってはならないし、また信託財産も独立したものとして管理される必要がある。したがって、信託契約という名前は用いられているが、第1 家族信託契約の仕組み等を知る 17
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