4_家契
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18 第1章 家族信託契約の法制度を知る誰の目から見ても委託者から受託者に対し実質当該財産が贈与され、受託者において、受益者を無視して自由に所有者のように振る舞うような仕組みはもはや信託ではなく、受託者に対する単なる贈与契約に過ぎないということである。⑶ ❸の基本的要件について この財産の移転の結果、受益者と受託者との衡平のとれた信頼関係が確立していることが民事信託の第3の要件となる。要は、信託の開始後は受益者と受託者との関係が中心となり、それが衡平(エクイティ)がとれた権利義務の関係として確立し、確実に受益権の内容が実現されるように、仕組みの上で受益者が守られていることが大切である。 したがって、信託と言えるためには、この信託の本質ともいうべき信認関係の確立が不可欠であり、受託者に信認義務(善管注意義務や忠実義務など)を負わせない内容の信託行為、例えば「受託者が自由に何でもできる信託」あるいは反対に「受託者が受益者の言いなりになる信託」は本来の信託とは言えないのである。■ 信認関係と信認義務  信認義務は、一般には受認者(受託者)が委託者に対して負う義務で、取引において忠実かつ誠実に行動する義務のことである。この信認義務を負う関係を信認関係という。 信託は、信頼できる人に財産の名義を移して当該財産の管理や活用、そして処分を託すとともに、誠実に受益者に対し利益を享受させることを目的とした制度である。つまり、信託を設定する委託者、信託の利益を受ける受益者と受託者との信認関係(fiduciary relationship)と信認義務(fiduciary duty)こそが、信託の本質(核心)となっている(四宮「信託法」65-68頁、樋口「信託法ノートⅠ」27、68頁、「信託法ノートⅡ」128頁)。信じて財産を託すという信託当事者の信頼関係があってこそ

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