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4 「信託もどき契約」を考える人の誤り20 第1章 家族信託契約の法制度を知る●  託す人が複数いる場合に、その人々を公平に扱う義務(公平義務)を掲げている。(前掲「フィデューシャリー『託される人』の法理論」109頁)※ 我が国の場合は、「公平義務」の位置づけについては、善管注意義務の一種であるという考え方が有力である(「全訂」第2編第8・5㈣参照)。⑴ 上述した基本的3要件を欠く行為は、信託契約とは言えない。 それは、「信託設定意思」がないという考え方もできるからである。 その例としては、前述したように、受託者が何ら制限を受けることなく何でもできる信託、例えば自由に受益者を変更したり、受益者を護ることなく信託の給付を拒否できることを内容とする信託が代表的な例である。 そのほかの例としては、信託財産の移転が単なる名目的で、そのすべての事務を委託者自らが指図して処理するものや、いわゆる資産隠しの事例などがある。⑵ 金融機関等に持ち込まれる信託契約等を見ていると、これらの基本的成立要件を吟味検討したとは思われない事例が目立つ。 これらについては、当事者間では有効であるという考え方や、あるいは成立はするが終了事由になるという考え方もあろう。しかし、信託法制上の利益は受けられず、もちろん倒産隔離機能も生じないのはいうまでもない。 しかも、事例によっては、反対に信託財産の受託者への贈与等として課税の対象になることも考えなければなるまい。

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