178 第1章 金融機関が納得できる信託行為を考える的である。その理由は、それぞれの金融機関によって異なるのであろうが、民事信託管理口座がいかなる口座であるのか、またその口座を開設し管理運用を適正に行うには何をすべきかなど、さまざまな解決すべき問題があるからではなかろうかと思う。しかし一方で、金融機関によっては、顧客の依頼を断り切れず、あるいは安易にいわゆる「屋号口座」ともいうべき信託口口座類似名称の口座を開設するものの、当該預金債権については倒産隔離機能を持たせないという説明をしているところもある。 家族民事信託においては、この信託口口座こそが大事な預金等の一種の公示方法となるのであり、上記の屋号口座でもって信託口口座を代替することはできない。⑵ 中には民事信託の手続代行をうたいながら民事信託管理口座の開設を拒否する銀行もある。 ある銀行のホームページに「民事信託スキームの提案から、民事信託契約に係る公正証書の作成、民事信託契約に基づく信託登記などの手続をサポートする」とあった。 そこで、信託契約公正証書を作成した受託者T氏から、信託口口座を開設できる銀行を紹介してほしいという話があったので、上記ホームページの内容から民事信託契約の口座を開設できるかもしれないと思い、T氏に当該銀行を紹介した。 しかし、すぐにT氏から「当該銀行では信託口口座開設はできなかった」とのメールが届いた。そこで当該銀行の担当者に電話して確認したところ、民事信託の信託口口座は開設しないというのが銀行の方針だということで、応じてもらえなかった。矛盾を感じながら、別の銀行等金融機関を探した。
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