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2 信託内融資となるとさらにハードルは高い■ 民事信託の規律の維持のために  信託銀行の勤務経験のある渋谷陽一郎氏は、著書「民事信託のための信託監督人の実務」の中で、金融機関における民事信託に対する規律について次のように述べている。 「現在、民事信託は着実に普及しつつあり、金融庁が所管する金融機関によって民事信託のサポートサービスまで登場するような状況に至っている。金融機関による民事信託へのコミットは、金融機関のコンプライアンス重視の姿勢から、民事信託実務の規律化を促進するはずだ(金融機関としても不適法・不適切と認められる民事信託案件には与信できないだろう)。今後、金融庁としては、監督や検査の指導上、金融機関における信託口座の開設を許容し得るための民事信託の要件、そして、金融機関が融資可能な民事信託の基準などについて、ガイドライン等を策定していく必要が生じるのではあるまいか。そこでは、民事信託における法令遵守(信託の実質の確保)が必須となるはずだ」(31頁)。 受託者名義での融資(「信託内融資」ともいう)はしないとする銀行等金融機関もある。 不動産管理処分信託となると、時間の経過とともに増改築や建替えが必要となり、これに伴い新たな銀行融資が必要となる。簡単に、信託口口座の開設ができたので、当然融資を受けることができると考えていたところ、信託内融資はできないと断られることがある。結果、他行での取引となるが、取引実績もないので融資を受けられるかどうかわからない。信託契約の条項を見ると、信託口口座は公正証書に記載された金融機関の特定の信託口口座と指定され、他行に信託口口座を開設できるとする条項になっておらず、青くなっている受託者を目にしている。 口座開設時に、倒産隔離機能の有無とともに受託者名義での融資を受け第1 信託口口座開設先の金融機関が求めるもの 179

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