筆者が「遺言代用信託」と説明する場合、「遺言代用型信託(受益者連続信託)」と「遺産分割型信託」の二つの信託契約を含めている。 遺言代用型信託(受益者連続信託)は、委託者(兼受益者)の死亡を始期として、信託財産から給付を受ける権利を取得する受益者(死亡後受益者)について、①委託者の死亡の時に受益者となるべき者として指定された者が受益権を取得する旨の定めのある信託(法90条1項1号)、または②委託者の死亡の時以後に受益者が信託財産に係る給付を受ける旨の定めのある信託(法90条1項2号)のことである(新井「信託法─第4版」169頁)。 例えば、他人に財産を信託して、委託者自身を自己生存中の受益者とし、自己の子・配偶者その他の者を「死亡後受益者」(委託者の死亡を始期として信託財産から給付を受ける権利を取得する受益者)とすることによって、委託者本人の死亡後における財産分配を信託によって達成しようとするものである(寺本「逐条解説」256頁)。 遺言代用信託(遺産分割型信託)は、委託者兼受益者の死亡時に信託を終了させて帰属権利者等に委託者の財産を承継遺贈させる仕組みである。これは、信託法145条1項の規定を活用するなど特別の定めを置くことによって、遺言のように自由に撤回できなくなるため、確実に遺産を承継(遺贈)させたいときに利用されている。❷ 任意後見支援型信託契約 家族信託契約は、委託者本人の判断能力低下に備えての信託の仕組みであり、成年後見制度の代替的機能を有している。その代表的な信託は、委託者の意思能力(判断能力)の喪失や低下を効力発生の条件とする財産管理処分(活用)型の信託契約であり、多くは高齢者が将来自らの判断能力の低下する事態に備える信託と言える(寺本「逐条解説」256頁参照)。 任意後見支援型信託契約は、委託者が任意後見契約を締結する一方で、重要な財産を信託財産として財産管理等信託契約を締結し、成年後見制度とは別の枠組みで管理活用するというものである。第1款 選択する信託行為 201
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