4_家契
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2 信託行為の複数設定202 第2章 金融機関をはじめ皆が納得する家族民事信託条項定 筆者が推奨しているのは、この任意後見契約と併用した家族信託契約である。 この仕組みを選択する理由は、第1に、任意後見人では当該財産の管理が難しい場合や当該財産が家産承継させる大切な財産である場合などに、これを任意後見事務とは別枠で管理運用しあるいは当該財産を承継させるためである。第2に、成年後見制度ではその任務が本人自身のための身上保護を中心とした財産管理制度であることから、本人が扶養している配偶者や障害を有する子の生活や福祉を確実に確保するために、本人の財産から金融資産や収益性のある不動産などを切り離し信託財産として活用し、成年後見制度の枠を超えて保護を要する家族のために財産を有効に活用するというものである。❶ 不動産管理処分信託契約と金銭等金融資産管理処分信託契約の分離設❷ 自宅不動産と賃貸用不動産管理処分信託契約の分離設定❸ 夫婦共有不動産の配偶者ごとの信託契約 同時に設定できる信託を複数の信託契約で締結することは正しいのか。 筆者の場合は、上記3例の場合は一つの信託契約公正証書で契約を締結することにしている。信託の受託者裁量機能を最大限活用するためである。 一方で別個の契約書で作成すべきだとする実務家がいる。その理由は、①受託者の担うべき事務内容が明確になること、特に、受託者の分別管理義務が履行しやすいこと、②課税の関係が単純化されること、③登記が複雑にならないことを挙げている。確かにそのとおりである。 しかしながら、それは信託として機能してはじめて言えることである。 まず、❶の例において、不動産管理処分信託契約は金銭等金融資産管理

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