204 第2章 金融機関をはじめ皆が納得する家族民事信託条項 委託者S(以下「委託者」または「委託者S」という)は、受託者T(以下「受託者」または「受託者T」という)に対し、第1条記載の信託の目的達成のため、第2条記載の財産を信託財産として管理処分することを信託し、受託者Tはこれを引き受けた(以下「本信託契約」という。また、本信託契約に基づいて設定された信託を「本信託」という)。■ 金融機関が求める条項 信託を設定する場合、信託財産を担保とした金融機関借入金債務については、信託財産責任負担債務としてこれを引き受けるものとする。 「信託契約」は、委託者と受託者との契約の締結によって信託が設定される信託の形態である。 法は、信託契約について特別の方式や書式等を定めてはいない。任意後見契約のように、いわゆる法定の要式行為とはされていないので、委託者となるべき者と受託者となるべき者との間の口頭の合意で成立してしまう契約とされている。 しかし、家族信託契約は、成年後見制度(任意後見契約)を補完し遺言に代替する制度である。この二つの法制度は、いずれも要式行為である。任意後見契約は公正証書により、また遺言は書面によって作成することが要求されているので、これらを補完・代替する家族信託契約も書面によることは当然である。特に幅広く後見的財産管理機能が組み込まれていることから、任意後見契約に準じて原則公正証書によることが求められる法律行為であると考えている(本書25頁)。契約の趣旨■ 契約の締結:契約冒頭部分第2款 契約条項の定め方
元のページ ../index.html#60