「信託契約締結条項」は、本例のように「契約の趣旨」として書きだす例のほかに、一つの条項として記載する例、さらには信託の目的条項や信託財産の条項の中で定める例がある。民事信託の場合、契約の締結に関する定め(契約締結条項)については、特に定まった方式はない。 「信託財産責任負担債務引受条項」は、別途条項を設けた場合は不要という考えもできよう。しかし、債務引受を伴う信託契約であることを明確にするために記載することも少なくないと考えている。 信託の設定にあたっては、信託財産を担保とする金融機関に対する債務がある場合、信託財産責任負担債務の引受の問題が生起する。この場合、信託財産責任負担債務の引受をしないという者もいようが、債権者の意向を無視した場合など、事案によっては「詐害信託」として信託の設定自体が取り消されることも考えられる。また、取引約定書の「期限の利益」の「債務者(設定者)の債権保全を必要とする相当の事由が生じたとき」に該当し、期限の利益が喪失するリスクもあろう。詳細は、第5款で説明する。(目的)第1条 本信託の目的は、第2条記載の財産を信託財産として管理運用及び処分、その他本信託目的の達成のために必要な行為を行い、受益者らの安定した生活と福祉を確保するとともに、資産の適正な管理運用を通じて次代への円滑な資産承継を図ることを目的とする。第3款 信託の目的 205第3款 信託の目的
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