4_家契
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iv 者との信認関係の基礎となる衡平さ(エクイティ)が失われたスキームや、「みなし受益者(特定委託者)制度」の餌食となりそうな何でもできる受託者のためのスキームを作り上げている専門家と称する者の姿を見ると、悲哀すら感じる。 本書は、拙書「新しい家族信託」(現在は、新訂版)で説明した内容について、さらに実務で現に起きている問題点などを中心に分かりやすく解説したものである。「新しい家族信託」が基本書であれば、本書は家族信託契約に特化した実践向けの解説書であり、「家族信託の困った事例集」でもある。 したがって、その内容は、家族民事信託を学ぶ人に会得してほしい基礎知識を、また信託を創造する人に守ってほしい大切なことがらを説明している。それに、私が複数の金融機関のリーガルチェック等を行っていることから、信託口座を開設する銀行等金融機関が口座開設にあたって考慮していることがらを紹介し、それとともに、家族信託契約には不可欠な法制度のパートナーともいうべき任意後見契約(任意後見制度)について、財産管理の両輪となって家族民事信託にハイブリッド効果をもたらすことを説明している。 文例等は「新訂 新しい家族信託」から引用しているが、内容的には、真に遺言や成年後見制度に替わる家族信託制度実現のため、特に正しい家族民事信託普及に向けてまがい物を許容しないという視点に立ち、可能な限りデフォルト的設定の考えを排除したより堅実的なものになっていることを申し添えておく。4年前、上記の初版を世に出させていただいたときから、家族のための民事信託は大きく動き出し、当時は考えることができないような特異な利用も始まっている。しかし、私は、一貫して「正しい信託の創造と誠実かつ適切な信託の運用」を訴えてきた。 このことは、信託の制作等を依頼する人も、創造する人も、そして信託

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