講家上
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1 伝統的判例法理の意義⑴ 訴訟事件・非訟事件2分論第2 従来の議論の整理 2第1章 訴訟と非訟続を実施する形態が実際には多い(第4参照)。3)非訟手続と訴訟手続の区分(及び非訟事件と訴訟事件の区分)については,高田裕成「訴訟と非訟」伊藤眞=山本和彦編『民事訴訟法の争点』(有斐閣,2009年)12頁以下参照。4)「後見的立場から,合目的の見地に立って,裁量権を行使して,その具体的分担額を決定するもので,その性質は非訟事件の裁判であり,純然たる訴訟事件の裁判ではない」との理由を述べる。 以下では,まず従来の議論(判例・学説)を簡単に整理し,その中で近時の判例に見られる新たな胎動も指摘する(第2参照)。次に,いわゆる訴訟・非訟2分論の実質的・現代的な意義に基づき,本稿の総括的な問題関心を提示する(第3参照)。その後,それを受ける形での具体的展開として,非訟手続3)を訴訟手続の前に前置するハイブリッド型手続の意義と課題(第4参照),および,秘密保護・迅速化など非訟化のニーズとそれを前提とした非訟化の際に受け皿となるべき非訟手続のあり方(第5参照)について検討し,最後に,今後の展望について付言する(第6参照)。 この問題に関する判例法理の中核は,「終局的に事実を確定し当事者の主張する権利義務の存否を確定するような裁判」を純然たる訴訟事件とし,「既存の債務関係について形成的に変更することに関するもの」を性質上の非訟事件とする2分法である。最初にこの点を明確化したのは,強制調停に関する最大決昭和35年7月6日(民集14巻9号1657頁)であったが,その後の判例は基本的にその判断を踏襲している。 ただ,判例は中途から,非訟事件の区分に関するもう一つの方向性として,夫婦同居の審判に関する最大決昭和40年6月30日(民集19巻4号1089頁)4)のように,手続の後見性,合目的性,裁量性が非訟事件として扱う理由付けとして付加されるようになった。さらに,遺産分割審判に関する最大決昭和41──判例法理の意義,学説の批判,新たな胎動

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