講家上
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3年3月2日(民集20巻3号360頁)のように,本質的に非訟事件である根拠として,後見性,合目的性,裁量性のみを述べるものも出来している。これらは,非訟裁判の判断の前提となる実体上の権利が(明確な形では)存在しない類型では,「権利の具体的内容の形成」という説明が困難であることを反映したものと思われる。 結局,判例法理の集大成として,例えば,株式買取価格決定に関する最決昭和48年3月1日(民集27巻2号161頁)は次のように述べる。すなわち,「当事者の意思いかんにかかわらず終局的に事実を確定し当事者の主張する実体的権利義務の存否を確定することを目的とする裁判が憲法32条にいう裁判,すなわち,固有の司法権の作用に属するところの訴訟事件であって,これについては憲法82条の『公開の対審・判決』が要求されるが,他方,基本的な法律関係はこれを変更せずに,裁判所が後見的立場から合目的の見地に立ち裁量権を行使してその具体的内容を形成する裁判は,固有の司法権の作用に属しない非訟事件の裁判であって,これは憲法32条,82条にいう裁判ではないと解すべく,したがって,非訟事件の手続および裁判に関する法律の規定について憲法32条,82条違反の問題を生じない」として,その詳細なあてはめに基づき理由付けをし,また迅速性も非訟事件性の根拠に加えている。そして,このような説明がその後の判例のスタンダードとなっている。5) ただ,以上のような枠組みの判例準則による説明が実質的に困難となっているようにみえる事件類型もなくはない。例えば,推定相続人の廃除について,判例は,実体法の態度として,請求権の付与ではなく,裁判所の後見的・総合的な判断に委ねている点を重視するが,6)そこでは,前提となる権利義務関係は存在せず,権利の具体的内容というよりも権利(相続権)そのものを形成(剥奪)する側面があり,またその要件も比較的明確であり,伝統的準則に基づく判例の理由付けが十分な説明になり得ているか,批判も多いところである。7)第2 従来の議論の整理──判例法理の意義,学説の批判,新たな胎動 5)激しい議論を受けて新たに非訟化された借地非訟事件でも,以上のような伝統的説明が踏襲され,合憲性が確認されている。最決昭和49年9月26日集民112号735頁(借地増改築許可決定),最決昭和56年3月26日集民132号363頁(借地権譲渡許可決定)など参照。6)最決昭和55年7月10日判タ425号77頁,最決昭和59年3月22日判タ524号203頁参照。7)今回の家事事件手続法の立案時の議論につき,第3の1参照。

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