4第1章 訴訟と非訟8)「国家のいわゆる後見的民事監督の作用に属し,固有の司法権の作用に属しないことが明らか」とする。9)このような評価については,高田・前掲注3)13頁参照。10)ここには,見方によっては,後述の「行政処分の非訟化」といった問題意識(後掲注60)参照)が既に見てとれる。11)兼子一「行政処分の取消判決の効力」同『民事法研究Ⅱ』(酒井書店,1954年)109頁注2参照。 また,スタンダードな説明とはやや異質な説明が試みられている例も見られないではない。例えば,最大決昭和41年12月27日(民集20巻10号2279頁)は,過料の裁判の非訟性について「行政作用」として説明するし,最大決昭和45年12月16日(民集24巻13号2099頁)も,更生計画認否の決定について,後見的民事監督作用という説明を試みる。8)これらは,実体権を前提とした形成作用でも判断の裁量性でも説明はやや困難であるところ,行政作用との類似性からアプローチしたものと思われる。 なお,これとの関係で興味深い点として,判例の形成に影響を与えたとされる9)兼子説においては,非訟=行政という観点から,前提問題について訴訟手続による可能性を強調し,実体的な権利の確定は,(非訟ではなく)むしろ行政処分として訴訟手続の機会を与える必要性が指摘されている点がある。10)すなわち,「非訟裁判所が裁判の前提として実体的要件を一応審査する場合でも(中略)これによって訴訟裁判権を代行したものと認めることはできない。例えば罹災都市借地借家臨時処理法第15条による裁判は,当事者の協議に代わり賃貸借の条件を形成するものであるが,借地権等のそのものの実体的要件は確定されないから,その裁判後でもその前提となる借地権等の存否の確認は別に訴訟で請求できるものと解しなければならない。訴訟か非訟かは単なる立法上の便宜の問題ではなく,当事者の実体的権利の確定はあくまで訴訟手続によるべきで,これを回避するため非訟手続を認めることは,行政処分として更に,訴訟手続による出訴の途を拓かない以上,国民の裁判を受ける権利の剥奪となるものだからである」とされる。11) 以上のような判例の態度は,誰が見ても訴訟事件として扱われるべきもの以外については(場合によっては,相続人廃除などそのようなものについても),様々な理由付けで非訟化を許し,立法者に広いフリーハンドを承認するものと評価することが可能である(その意義については,第3の1も参照)。
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