講家上
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6第1章 訴訟と非訟事件に関する最大判昭和25年2月1日(刑集4巻2号88頁)は,これを文字どおり裁判所で裁判を受ける機会を保障すれば足り,そこでの手続等については全て立法政策と割り切る旨の判断を示していた。すなわち,「憲法第32条は,何人も裁判所において裁判を受ける権利あることを規定したに過ぎないもので,如何なる裁判所において,裁判を受くべきかの裁判所の組織,権限等については,すべて法律において諸般の事情を勘案して決定すべき立法政策の問題であって,憲法には第81条を除くの外特にこれを制限する何等の規定も存しない」と判示する。 同様に,前掲最大決昭和35年7月6日も,憲法32条の趣旨として「憲法は一方において,基本的人権として裁判請求権を認め,何人も裁判所に対し裁判を請求して司法権による権利,利益の救済を求めることができることとする」として,裁判所による権利救済,換言すれば原告側の利益のみを問題としており,それをいかなる手続によって解決するかは立法政策である旨を前提とする。その後の判例でも,この点は,より明確化して維持されている。例えば,前掲最大決昭和45年12月16日は,更生計画認否の決定について,「憲法32条は,かかる裁判の請求権を保障しているものにほかならず,その本質において固有の司法権の作用に属しない非訟事件は,憲法32条の定める事項ではなく,したがって,非訟事件の手続および裁判に関する法律の規定について,憲法32条違反の問題は生じない」として,やはり「裁判請求権」のみを保障するようにみえる。 最近の最決平成20年5月8日(判時2011号116頁)でも,「憲法32条所定の裁判を受ける権利が性質上固有の司法作用の対象となるべき純然たる訴訟事件につき裁判所の判断を求めることができる権利をいうものであることは,当裁判所の判例の趣旨とするところである」として,「本質的に非訟事件である婚姻費用の分担に関する処分の審判に対する抗告審において手続にかかわる機会を失う不利益は,同条所定の『裁判を受ける権利』とは直接の関係がないというべきであるから,原審が,抗告人(原審における相手方)に対し抗告状及び抗告理由書の副本を送達せず,反論の機会を与えることなく不利益な判断をしたことが同条所定の『裁判を受ける権利』を侵害したものであるということはできず,本件抗告理由のうち憲法32条違反の主張には理由

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