講家上
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⑶ 憲法32条の実質化:審尋請求権論第1章 訴訟と非訟18)山木戸克己『民事訴訟理論の基礎的研究』(有斐閣,1961年)65頁参照。19)小島武司「非訟化の限界について」橋本公旦編『中央大学80周年記念論文集』(1965年)309頁参照。20)小島・前掲注19)310頁参照。21)中野貞一郎『民事手続の現在問題』(判例タイムズ社,1989年)10頁参照。10事件の関係人にも審尋を求める権利が認められるとの理解を示されていた。18)同様に,小島教授も,早い段階で憲法32条の重要性を指摘し,非訟事件にもその保障が及ぶ旨を論証している。19)すなわち,「憲法上の保障の核心をなすのは,〔憲法82条よりも:筆者補充〕むしろ憲法32条ではなかろうか。憲法32条は国民に対し『裁判を受ける権利』をみとめているが,この目的は国民にその紛争の解決にふさわしい適正かつ公平な審理並びに裁判を保障することにあると考えられる」として,「憲法32条の要請は,非訟事件にはそれに相応しい手続を,訴訟事件にはそれに相応しい手続を定め,各々その事件類型に適合した審理方式による裁判を求める権利を国民に保障することにある」と評価される。20) 以上のように,学説は,どちらかというと公開問題(憲法82条の問題)についてはそれほど強い関心を示さず,むしろ当事者の手続保障のあり方を憲法32条の問題として把握し,その適用範囲を憲法82条よりも広くとって,それが非訟事件にも適用されるべき旨の方向を示してきたものと言えよう。 以上のような学説の展開の背後には,憲法32条について,やはり判例とは異なり,実質的な内容を見出す試みが前提として存在する。代表的見解として,中野教授の見解がある。21)そこでは,基本的な問題意識として,「純然たる訴訟事件についてのみ公開対審原則が及ぶというのでは,それ以外の事件の裁判は憲法の埒外におかれ,国民は,その範囲で裁判を受ける権利の保障を享受しえないという結論になりかねない。公開対審を要しない性質の事件についても,公平な裁判所による公正な審理・裁判の保障を欠いてよいはずはない」とし,そこから,「『裁判所において裁判を受ける権利』(憲法32条)は,裁判にさいして審尋を受ける権利を伴う。裁判を受ける者は,裁判事項につき予め自己の見解を表明しかつ聴取される機会が与えられることを要求

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