講家上
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11⑷ 非訟事件に関する憲法的保障のコンセンサスする権利(審尋請求権)を憲法上保障されている」と評価し,22)単に裁判所の審判を受けられるというだけではなく,自己の見解の表明・聴取の権利をそこに包含すべきものとされる。その結果,「憲法における審尋請求権の保障は,国の裁判所の権限に属するすべての裁判手続に及ぶ。訴訟手続と非訟手続とをとわ」ないものと結論付ける。23) 中野説における「裁判事項につき予め自己の見解を表明しかつ聴取される機会が与えられることを要求する権利(審尋請求権)」が憲法32条の保障の下にあり,非訟事件についても妥当する旨の言明は,判例法理とは大きく乖離するものであるが,多くの学説の支持を得てきた。現在では,この点については相当広いコンセンサスが見出されるように思われる。例えば,福永教授は,「裁判所において裁判を受ける権利は,裁判に際して審尋を受ける権利を伴う。裁判を受ける者は,裁判事項につき予め自己の見解を表明し,かつ聴取される機会が与えられることを要求する権利(審尋請求権。「法的審問権」ともいわれる)は,これを認める明文規定は憲法には存しないが,解釈上当然に認められるものと解される」とされる。24) 以上のような検討から,現在の学説の水準を整理すると,①訴訟・非訟2分論の克服(非訟事件についても様々な種別の存在を前提に,争訟的非訟事件について訴訟と同様の憲法的保障の必要を説く),②憲法82条と32条の適用対象の相違の認識,③裁判を受ける権利(憲法32条)の非訟事件についての適用可能性,④審尋請求権を憲法32条の枠内で捉える理解ということになろう。 例えば,確立した現在の学説の水準を示すものとして,伊藤教授の体系書では,「争訟的非訟事件においては,係争利益にかかわる利害関係人が対立するわけであり,裁判所が判断を下す前提として,利害関係人に対して主張・立証の機会を与える必要は,訴訟事件と同じく存在する。ただし,その手続保障の必要が,訴訟事件における弁論主義のように,厳格な形をとらず,第2 従来の議論の整理──判例法理の意義,学説の批判,新たな胎動 22)中野・前掲注21)13頁参照。23)中野・前掲注21)15頁参照。24)福永有利「民事訴訟における憲法的保障」伊藤眞=山本和彦編『民事訴訟法の争点』9頁参照。

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